【令和8年度税制改正】中小企業の設備投資・賃上げ・防衛特別所得税・インボイスはこう変わる?社長が今から準備すべきこと

2026.07.10 / 税務

令和8年度(2026年度)の税制改正は、「強い経済」の実現に向けた設備投資・賃上げ支援が一つの目玉です。中小企業の社長にとっては、いまある資産の買い方・賃上げの進め方が直接変わる内容がいくつか含まれています。

この記事では、中小企業に影響の大きい六つ——少額減価償却資産の40万円未満への拡充賃上げ促進税制の見直し新設の特定生産性向上設備等投資促進税制研究開発税制の強化インボイス制度の経過措置の見直し、そして防衛特別所得税の創設を、実務目線で整理しました。

なお本記事は、成立した令和8年度税制改正(財務省「令和8年度税制改正の解説」)に基づいています。適用時期や個別のあてはめは会社ごとに異なるため、実際の適用は顧問税理士にご確認ください。

1まず全体像:中小企業に効く4つのポイント

細かい改正は多岐にわたりますが、まずは中小企業の社長が押さえておきたい四つを一覧にしました。

項目 改正のポイント 適用時期の目安
少額減価償却資産 取得価額基準が30万円未満→〈40万円未満〉に拡充(年間合計300万円まで) 令和8年4月1日以後取得分
賃上げ促進税制 大企業向けは廃止、中小は維持。教育訓練費の上乗せ措置は廃止 令和8年3月末〜順次
特定生産性向上設備等投資促進税制(新設) 大規模投資に即時償却又は税額控除7%(建物等は4%) 令和11年3月末までの確認分
研究開発税制 「戦略技術領域型」を新設(控除率40〜50%)。国外委託研究は控除を制限 令和8年度〜順次
インボイス経過措置 小規模個人事業者に3割特例(令和9・10年分)。免税事業者からの仕入れ控除は段階縮減 令和9年〜令和13年9月末
防衛特別所得税(新設) 所得税額に税率1%の付加税。復興特別所得税は1%引下げ 令和9年1月〜

このうち前の五つは主に法人・事業者の話、最後の防衛特別所得税は個人(社長ご自身や従業員)の所得税の話です。以下で順に見ていきます。

2少額減価償却資産の特例が「40万円未満」に拡充

取得価額が一定額未満の資産を、購入した年にまるごと経費にできるのが、中小企業者等の少額減価償却資産の特例です。今回、その基準額が引き上げられました。

取得価額基準 30万円未満→〈40万円未満〉に引き上げ
年間の上限 合計300万円まで(変更なし)
従業員要件 常時使用する従業員500人以下→〈400人以下〉に厳格化
適用期限 令和11年(2029年)3月末まで3年延長
適用開始 令和8年4月1日以後に取得した資産から
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ポイントパソコン・工具・小型機械など、30万円以上40万円未満の資産が新たに一括で経費化できるようになります。物価高で設備単価が上がっている今、買い方の選択肢が広がります。
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ここに注意常時使用する従業員が400人を超える法人は対象外になります(パート・アルバイトも含めて判定)。また、年300万円の枠は従来どおりで、この特例で経費化しても固定資産税(償却資産)の対象にはなる点にも注意しましょう。

3賃上げ促進税制の見直し(大企業は廃止・中小は維持)

賃上げをした企業の法人税を軽くする賃上げ促進税制は、企業規模ごとに扱いが分かれました。

区分 見直しの内容 適用期限
大企業向け 適用期限を待たず廃止 令和8年3月31日で廃止
中堅企業向け 適用要件・控除率を見直した上で廃止 令和9年3月31日で廃止
中小企業向け 制度は維持。ただし教育訓練費の上乗せ措置は廃止 令和9年3月31日まで適用

すべての区分で教育訓練費による上乗せ措置が廃止されます。中小企業は制度自体は残りますが、この上乗せ(10%)がなくなる分、適用できる最大の税額控除率は45%から35%に下がります。教育訓練費を前提に控除を見込んでいた会社は、計画の組み直しが必要です。

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ここに注意賃上げ促進税制は、そもそも法人税が発生していないと直接は使えません(赤字の年は即効性が薄い)。中小企業には控除しきれなかった額の繰越し措置もありますので、賃上げのタイミングは利益見通しとセットで検討しましょう。

4【新設】特定生産性向上設備等投資促進税制(大胆な投資促進税制)

国内の高付加価値な設備投資を後押しするための新しい減税です。全ての業種が対象で、大規模な投資について即時償却税額控除の選択適用ができます。

対象者 青色申告法人(経済産業大臣の確認を受けた計画に限る)
投資額要件 取得価額の合計が35億円以上(中小企業者等は5億円以上)
収益要件 投資計画の年平均の投資利益率15%以上が見込まれること
優遇内容 即時償却 又は 税額控除7%(建物・建物附属設備・構築物は4%)
控除の上限 当期の法人税額の20%を上限(一定の場合3年繰越し可)
適用時期 改正産業競争力強化法の施行日〜令和11年3月31日に確認を受け、確認後5年以内に事業供用した資産
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ここに注意中小企業者等でも5億円以上の大型投資が前提で、経済産業大臣の確認も必要なため、多くの中小企業にはハードルが高めです。地域未来投資促進税制など他の設備投資税制との重複適用はできません。
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ポイント大型の設備計画がある会社は検討価値がありますが、通常規模の投資なら中小企業経営強化税制など既存の優遇との比較が現実的です。どの制度が有利かは早めにシミュレーションを。

5研究開発税制の強化(戦略技術領域型の新設)

国家戦略として重要な分野の研究開発を強く後押しするため、「戦略技術領域型」が新設されます。既存の措置とは別枠で、高い税額控除率が設定されているのが特徴です。

対象分野 AI・量子・半導体・バイオ・宇宙など、国が定める戦略技術領域
控除率 試験研究費の40%(認定研究機関との共同・委託研究は50%)
控除の上限 当期の法人税額の10%を上限(超過額は3年間繰越し可)
位置づけ 既存の一般型・オープンイノベーション型とは別枠の措置
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ポイント対象分野に取り組む会社にとっては、別枠で最大50%という高い控除率が用意されます。認定を前提とする制度のため、該当しそうな研究開発があれば早めに要件を確認しておくと有利です。
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ここに注意国内の研究拠点を守る観点から、国外で行う委託研究については控除の対象が制限されます(対象額は50%相当。ただし令和8年度は70%、令和9年度は60%の経過措置)。研究の一部を海外に委託している会社は、控除額への影響を確認しましょう。

6インボイス制度の経過措置の見直し

インボイス制度をめぐる二つの経過措置——小規模事業者向けの特例と、免税事業者からの仕入れに係る控除——が、それぞれ見直されました。

(1)小規模な個人事業者への「3割特例」

これまでの2割特例(納税額を売上税額の2割にできる措置)の終了後も、小規模な個人事業者については、納付額を売上税額の3割とできる措置がさらに2年間(令和9年・令和10年分)講じられます。

(2)免税事業者からの仕入れに係る控除の段階的縮減

免税事業者からの仕入れについて控除できる割合は、最終的な適用期限を2年延長した上で、次のように段階的に縮減され、令和13年9月末で終了します。

期間 控除できる割合
〜令和8年9月末 8割控除
令和8年10月〜令和10年9月末 7割控除
令和10年10月〜令和12年9月末 5割控除
令和12年10月〜令和13年9月末 3割控除(その後は控除なし)
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ここに注意あわせて、1免税事業者ごとの年間適用上限仕入額が1億円(現行10億円)に引下げられます。免税事業者との取引が多い会社は、控除できる割合が下がる予定を前提に、契約条件や価格を早めに見直しておくと安心です。

7防衛特別所得税の創設(所得税額に1%上乗せ)

防衛力強化の財源確保のため、新しい付加税として防衛特別所得税(仮称)が創設されます。社長ご自身の所得税にも、会社の源泉徴収実務にも関係します。

課税の仕組み その年分の基準所得税額(所得税額)に税率1%を乗じた額を上乗せ
課税期間 令和9年1月から
復興特別所得税との関係 同時に復興特別所得税の税率を1%引下げ(足元の家計負担が増えないよう配慮)
復興財源への影響 復興特別所得税の課税期間を令和29年まで10年延長し、総額を確保
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ポイント単年で見れば、復興特別所得税の1%引下げと防衛特別所得税の1%が相殺的になり、足元の手取りは大きくは変わりません。ただし復興特別所得税の期間が延びるため、長期で見れば負担は続きます
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ここに注意会社側は、給与・報酬などの源泉徴収事務の変更に注意が必要です。適用は令和9年1月からですが、給与ソフトの設定変更などは早めの確認をお勧めします。

8まとめ:自社に効く改正を、今のうちに見極める

令和8年度の改正は、少額減価償却資産の拡充のようにすぐ使えるものから、大型投資向けの新制度、研究開発やインボイス、個人の所得税にかかるものまで幅広く及びます。自社にどれが効くかは、規模や投資計画によって大きく異なります。

特に設備投資や賃上げは、期首の計画段階で動いた方が有利なケースが多くあります。決算直前では選択肢が限られることもあるため、早めに一度、自社の計画と照らし合わせてみましょう。

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