【審査の実際】信用金庫は融資のとき、会社の「どこ」を見ているのか?

2026.08.09 / 資金調達

融資を申し込むとき、金融機関が会社の何を、どう見ているのかが分かっていると、準備の質が変わり、審査の通り方も変わります。信用金庫(以下、信金)の審査は、大手銀行の機械的なスコアリングとは少し性格が異なります。

決算書の数字はもちろん見られますが、それだけではありません。地域密着の信金だからこそ重視する視点があります。

この記事では、信金の融資審査の実際を、定量(数字)と定性(実態)の両面から整理し、審査に強くなるための備えを解説します。

1審査は「定量」と「定性」の両輪

金融機関の審査は、大きく2つの側面から成り立っています。1つは決算書などの数字で見る定量評価、もう1つは事業の中身や将来性で見る定性評価です。スコアリング中心の大手に比べ、信金は定性評価、つまり「数字に表れない実態」を比較的重く見る傾向があります。

これは中小企業にとって追い風です。足元の数字が完璧でなくても、事業の強みや将来性、経営者の姿勢を伝えられれば、総合的に評価してもらえる余地があるということだからです。数字と物語の両方で自社を説明する準備が効きます。

定量評価 決算書の数字。収益性・安全性・返済能力などを指標で見る
定性評価 事業の実態・強み・将来性・経営者の姿勢など数字に表れない面
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ポイント「銀行は晴れの日に傘を貸し、雨が降ったら傘を取り上げる」とよく言われます。都市銀行など規模の大きい金融機関ほどこの傾向が強く、業績が崩れると一転して姿勢が厳しくなりがちです。一方、信金・信組は比較的義理人情に厚く、数字が伴わない時期でも、定性的な部分を評価して支えてくれる傾向があります。日頃からの関係づくりが、いざというときに生きてきます。

2定量——数字で見られる基本

まず土台になるのが決算書の数字です。信金は主に、①きちんと利益が出ているか(収益性)、②自己資本は厚いか・債務超過でないか(安全性)、③借入を返していけるか(返済能力)を見ます。特に返済能力は、利益と減価償却を足した金額で、年間の返済をまかなえているかという視点で評価されます。

注意したいのは、金融機関は決算書を「実態に引き直して」見ることです。回収見込みのない売掛金や、価値の下がった在庫・資産は差し引いて評価されます。表面上は資産超過でも、実態では債務超過と判断されることがあります。見せかけより、実態の数字が問われるということです。

実態への引き直しで特にチェックされやすいのは、次のような科目です。

科目 実態に引き直される理由
売掛金 長期間回収されず滞留しているものは、回収不能(不良債権)とみなされ資産から差し引かれる
棚卸資産(在庫) 長期滞留・陳腐化した在庫は「売れない在庫」と判断され、評価額が切り下げられる
役員貸付金 会社に返済されている実態がなければ、実質的な社外流出として資産性を認められにくい
仮払金・立替金 内容が不明なまま残っていると、使途不明の支出として資産から除かれる
土地・有価証券・ゴルフ会員権 帳簿価額ではなく時価で評価され、含み損は自己資本から差し引かれる
繰延資産・ソフトウェア等 換金価値がないため、実態評価では資産と認められにくい
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ポイント返済能力は「利益+減価償却」で年間返済をまかなえるかで見る。売掛金・在庫は実態に引き直して評価される。

3定性——実態と将来性で見られる

信金が重視するのが、数字に表れない実態です。どんな商品・サービスで、誰に、どう売っているのか。競合に対する強みは何か。取引先は安定しているか。経営者に事業を伸ばす意欲と計画があるか——こうした事業の中身が、定性評価の対象です。

国は、この定性面も含めて金融機関と中小企業が対話するための道具として「ローカルベンチマーク(ロカベン)」を公表しています。財務指標に加え、商流や強み・経営者の意欲といった非財務情報を整理する枠組みで、これを使って自社を説明できると、信金との対話が格段に深まります。審査担当者が社内で稟議を通しやすくなる材料にもなります。

もう1つ、定性評価で気をつけたいのが、専門用語を多用しないことです。審査を担当するのは、その業界の専門家ではありません。ご年配の方が担当するケースもあり、AIなどの最新技術には詳しくないことも珍しくありません。どれほど優れた商品・サービスを持っていても、審査担当者に伝わらなければ、評価されないのと同じです。事業計画書は素人が読んでも分かる言葉で作り、面談の場でも、専門用語をかみ砕いた分かりやすい説明を心がけましょう。

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ここに注意専門用語やカタカナ語を並べた事業計画書は、内容が正しく伝わらず、担当者が社内で稟議を通す材料になりにくい。「業界を知らない人が読んでも分かるか」を基準に見直してから提出する。

4資金使途と返済原資——最重要の2点

審査で必ず問われるのが、「何に使うのか(資金使途)」と「何で返すのか(返済原資)」です。この2点があいまいだと、どんなに決算が良くても話が進みません。逆に、ここが明確なら、多少数字に弱さがあっても前向きに検討されます。

問われること 準備しておくこと
資金使途 何に・いくら使うかの内訳と根拠(見積り等)
返済原資 何で返すか。利益・回収・売上の裏づけ
必要性 なぜ今その資金が必要かの説明
効果 借入がどう業績につながるか

運転資金なら「なぜ今それだけ必要なのか」、設備資金なら「その投資がどう回収されるのか」。この筋道を、資金繰り表や事業計画で裏づけて説明できるかが、審査の分かれ目になります。

なかでも資金使途は、審査項目の中でもとりわけ重要性の高い項目です。「なんとなくこれくらいかかりそう」という概算のままの申込みや、効果の説明があいまいな広告宣伝費に多額を充てる計画など、納得感の薄い資金使途では、融資が難しくなるか、通っても金額が減額されるケースが多くなります。使い道は1件ずつ見積りなどの根拠を添え、「使ったお金がどう売上・利益、そして返済につながるのか」まで筋道を示して説明しましょう。

5審査に強くなるための準備

審査に強い会社は、聞かれる前に材料をそろえています。直近の試算表を止めずに更新し、資金繰り表で先々の見通しを見える化し、自社の強みを言葉にしておく。この3点セットがあるだけで、審査担当者の印象は大きく変わります。

そして最後は、社長が自分の言葉で語れるかです。資料は税理士が整えられますが、事業への思いや将来の見通しを語るのは社長本人です。数字の背景と今後を自分の言葉で説明できると、信金は「応援したい会社」として向き合ってくれます。準備の段階から、ぜひご一緒させてください。

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ここに注意試算表が何ヶ月も止まっている、資金繰り表がない、という状態は準備不足の印象を与える。申込み前に足元の資料を整える。

6まとめ:数字と実態の両方で、自社を語れるように

信金の融資審査は、決算書の数字(定量)と、事業の実態・将来性(定性)の両輪で行われます。数字は実態に引き直して見られ、資金使途と返済原資が最重要ポイントになります。地域密着の信金だからこそ、数字に表れない強みを伝える余地が大きいのが特徴です。

審査に強くなる鍵は、足元の資料を整え、自社の強みと今後を自分の言葉で語れるように準備しておくことです。何をどう準備すればよいか、ロカベンをどう活用するか迷ったら、ご一緒に組み立てます。融資の準備でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

信用金庫の融資審査を攻略する図解。数字と物語の両輪、決算書の実態への引き直し、専門用語を避けた伝わる説明、資金使途と返済原資、ローカルベンチマークの活用、試算表・資金繰り表の準備を8コマでまとめたもの
信用金庫の融資審査 攻略ガイド(タップで拡大)

融資の準備、ご一緒に組み立てます

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本記事は、公開時点の法令および日本政策金融公庫・信用保証協会・各自治体等が公表する資料にもとづく一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の資金調達に関する助言や、融資・保証・補助金の採択を保証するものではありません。実際の審査結果や適用条件は、事業内容・財務状況・申込時期によって異なります。

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