【創業期の税務】設立直後の社長が損する落とし穴7つ|対策をパターン別に解説

2026.07.23 / 税務

会社を設立すると、まず立ちはだかるのが税務の初期設定です。本業が忙しく後回しにされがちな部分ですが、創業期の届出や選択には期限が設定されているものが多く、知らないまま進めてしまうと数十万円単位で損をすることもあります。

しかもその多くは、設立後数か月以内という短期間の期限です。ここをきちんと押さえておけば、その後の負担がぐっと軽くなります。

この記事では、創業1期目の社長がつまずきやすい税務の落とし穴を7に絞り、それぞれの対策とあわせて整理しました。まずは全体像から確認していきましょう。

1まず全体像:創業期の落とし穴7つ 早見表

細かい解説に入る前に、まずは7つの落とし穴を一覧で押さえましょう。「自社はどれが危ないか」を意識しながら読み進めてください。

No 落とし穴 主なリスク 対策のポイント
青色申告の申請忘れ 赤字の繰越や少額償却の特例、各種税額控除などが使えない 設立から3か月以内に申請書を提出
役員報酬の決め忘れ 報酬の一部が経費にならず法人税増 設立から3か月以内に支給額を決定
創業費・開業費の計上漏れ 黒字の年に使える経費を取りこぼす 設立準備の領収書を保管・繰延資産化
消費税の判定ミス 想定外の納税・2割特例終了の影響 資本金とインボイス登録要否を事前に確認
源泉徴収漏れ 延滞税・不納付加算税が発生 報酬・給与から天引きし期日に納付
経費の公私混同 役員賞与認定で追徴のリスク 法人と個人の口座・カードを明確に分ける
帳簿づけの後回し 調査で説明できず痛い目に 月1回は帳簿を締める習慣化

2落とし穴①:青色申告の承認申請を出し忘れる

法人が青色申告の特典を受けるには、原則として設立から3か月以内(または最初の事業年度終了日の前日のいずれか早い日まで)に「青色申告の承認申請書」を提出する必要があります。

(1)青色申告で受けられる主なメリット

欠損金の繰越控除 赤字を最大10年間繰り越し、将来の黒字と相殺して法人税を軽減できる
少額減価償却の特例 30万円未満の資産を、年間300万円まで一括で経費にできる(中小企業者等)
各種の税制優遇 特別償却・税額控除など、青色申告が前提の優遇を利用できる
⚠️

ここに注意提出期限は「設立から3か月以内」と「最初の事業年度末の前日」のいずれか早い日。1日でも過ぎると初年度は青色になれず、上のメリットが丸ごと使えません。

3落とし穴②:役員報酬を期首から3か月以内に決めていない

役員報酬は自由に決められますが、経費(損金)にするにはルールがあります。特に多い誤解が「利益が出そうだから期の途中で報酬を上げる(または賞与を出す)」というもの。これは原則として経費になりません。

(1)役員報酬を経費にするための原則

定期同額給与 毎月同額で支給する給与。期首から3か月以内に決めれば経費(損金)にできる
改定できる時期 原則、事業年度開始から3か月以内。期中の自由な増減は経費(損金)にできない
期中に上げると 増額した超過分は経費にならず、法人税の負担だけが増える
💡

ポイント役員報酬は期首に1年分を設計するのが鉄則です。決算の着地見込みとあわせて期首に決めることで、会社と社長個人の手取りを最適化できます。

4落とし穴③:創業費・開業費を経費化し損ねる

設立前後にかかった費用は繰延資産として計上でき、好きなタイミングで経費化(任意償却)できるのが大きな特徴です。黒字が出た年にまとめて経費化すれば、節税に使えます。

創立費 会社設立のためにかかった費用(登記費用・定款作成費用・発起人報酬など)
開業費 設立後、営業開始までにかかった費用(広告宣伝・打合せ・備品購入など)
経費化の目安 おおむね創業の1年ほど前までの支出が目安。それ以前は事業関連性の説明が難しい場合も

設立準備で使ったお金の領収書は、少額でも必ず保管しておきましょう。ここを取りこぼすと、黒字化した年に使えるはずの経費を丸ごと失います。

5落とし穴④:消費税の免税・課税判定を誤る

設立当初は消費税の免税事業者になれるケースが多いのですが、判定を誤ると想定外の納税が発生します。まずは自社がどうなるかを確認しましょう。

資本金1,000万円以上で設立 初年度から課税事業者(免税になれない)
インボイス登録をする 免税事業者でも課税事業者となり、消費税の納税義務が生じる
2割特例(負担軽減) 2026年9月30日を含む課税期間まで。以降は本則課税か簡易課税を選び直す
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ここに注意(2割特例の終了)2割特例は2026年9月末を含む課税期間で終了します。終了後は納税額が増える可能性があるため、今のうちに次の一手をシミュレーションしておきましょう。
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ここに注意(還付目的で課税事業者になるとき)1期目が赤字で、設備投資などにかかった消費税の還付を受けるために、あえて課税事業者を選ぶケースもあります。その場合は、1期目だけでなく2期目の納税額(または還付額)まで必ずシミュレーションしてください。1期目は還付でも、2期目が納付ポジションになり、2期通算では結局納税額のほうが多くなって損をする、というミスにつながります。

6落とし穴⑤〜⑦:源泉徴収漏れ・経費の公私混同・帳簿の後回し

残る3つは、金額は地味でも放置すると後からじわじわ効いてくるタイプです。特に⑥⑦は、最初に習慣化を怠るとその後もズルズルと続き、税務調査で痛い目を見る事業者が数多く見られます。

落とし穴 何が問題か 最初にやるべきこと
⑤ 源泉徴収漏れ 報酬・給与からの天引き・納付を忘れると延滞税・不納付加算税 対象の支払いを洗い出し、納期を管理
⑥ 経費の公私混同 社長個人の支出が混ざり、役員賞与認定で追徴 法人用の口座・カードを分ける
⑦ 帳簿の後回し 領収書をため込み、決算前に大混乱・説明不能 月1回は帳簿を締めるルーティン化

7補足:創業初期は「融資を受けやすい」タイミング

税務そのものではありませんが、創業初期(おおむね1期目の決算が終わるまで)は、実績が乏しくても創業計画をもとに融資を受けやすい時期です。将来の事業拡大を見据えるなら、一度トライしておく価値があります。

💡

ポイント日本政策金融公庫の創業融資は「設立後おおむね2回目の申告を終えるまで」といった要件があり、時期を逃すと使えなくなる制度もあります。税務の初期設定と資金調達はセットで考えましょう。

8まとめ:設立後の届出チェックリスト

創業期の税務は、最初の設計で今後の楽さが決まります。特に設立直後の届出は期限がタイトなので、下の一覧で抜け漏れを確認してください。

主な届出・手続き 提出先 期限の目安
法人設立届出書
※東京都に本店所在地がある場合
税務署・都税事務所(市役所) 設立後 速やかに(税務署は原則2か月以内)
青色申告の承認申請書 税務署 設立後3か月以内
給与支払事務所等の開設届出書 税務署 開設から1か月以内
源泉所得税の納期の特例の申請書 税務署 適用を受けたい時期の前に随時
インボイス発行事業者の登録申請 税務署 登録を受けたい課税期間に応じて
定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請書 税務署 適用を受けたい事業年度終了の日まで
申告書の提出期限の延長の処分等の届出書・承認等の申請書 都税事務所 適用を受けたい事業年度終了の日まで
健康保険・厚生年金 新規適用届
※役員報酬を支給する場合
年金事務所 設立後 速やかに

「これは経費になる?」「うちは消費税をどうすべき?」と迷った時点で気軽に聞ける相手がいるかどうかで、創業期の安心感はまったく変わります。当事務所では初回の無料相談を承っています。何から手をつければいいか分からない段階でも、お気軽にご相談ください。

設立直後の社長が押さえる税務ルールを1枚にまとめた図解
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創業期の税務、迷ったら早めにご相談ください

青色申告・役員報酬・消費税の判定など、期限のある初期設定を一緒に整理します。初回のご相談は無料です。

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本記事は、公開時点の法令・通達および国税庁の公表資料にもとづく一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する税務判断・助言を行うものではありません。実際の取扱いは、事実関係や適用時期によって異なります。

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